介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第16回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第16回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、憎めないリョウくんのお話です。


精神障がい者グループホームは
毎日がワクワクのアトラクション
楽しくて嬉しくて幸せすぎ。

第16回 「ちょいちょい何かやらかすリョウくん」

リョウくんは、お目がパッチリで、まつ毛も長く、背が高くて、若い女性の利用者さんから人気があり、抱きつかれたり、プレゼントをもらったり、話題になったりするが、女性には全く興味がない28才男子。

そんなリョウくんは、いつも、半分現実の世界にいるが、半分は自分の想像の世界にいる。

自分の世界には、江戸川コナンやワンピースの海賊、シャーロックホームズや明智小五郎がおり、その世界では、よく殺人や誘拐事件が起こっていて、事件を解決すべくスタッフに謎解きをお願いしたり、コナン君に伝言を頼んできたりする。

「岡田さん、奈良シカオ君が誘拐されたからコナン君に伝えてきて」

コナン君は、今どこにいるの?

「わからない。」

そうか、じゃあ会ったら伝えるね。

と、話を聞いて答えてあげると喜んでくれるし、結果を求められないので助かる。ただ、全く意味不明な内容を、際限なく呪文のように話してくることがあって、聞いてるふりをするのに大変な時もある。何かわかる単語があればそれを繰り返して、聞いてるよというと、安心してくれる。

彼は、嫌なことがあると、眉間にシワを寄せるのが不穏のサインだ。

ソルさんがヘンテコな歌を大声で歌い出したり、水分やお菓子の要求が却下されたり、スタッフが他の利用者さんと楽しく話していたり、好きでないスタッフから何か言われたりしたとき不穏になる。

ひどくなると、幻聴が聞こえるのか壁に向かって「コラ!お前!出て来い!」と大声で叫ぶこともある。壁を叩いたり、蹴ったりすることもある。窓からポケモンカードを撒いたり、お風呂のお湯を抜いたり、衣装ケースから服を全部出し床に散らかしたり、いろんな事をやらかす。

家族が買ってくれる高いゲーム機は4台目も壊してしまった。

この前は、ティッシュ9箱から全て床にばら撒いて、ちょっと早い雪景色アートを披露してくれた時は、不覚にも「キレイやなぁ」と言ってしまった。

ある日は、たまたまカギが開いていた事務所から炭酸のペットボトルを5本取ってきて一気に飲みほし、すべて吐いて、床もベッドもエライ事になった。

そんなこんなで、他の人がやらないだろう、色々『面白い事』をやらかしてくれる。

ブツブツ文句言いながら後片付けをしてる私の横でニコニコしながら見守ってくれる。

機嫌が良いと、近づいて、肩を組んできて耳元にフーと息をかけて「ふふふ」と笑う。

これは、慣れないとコワイし、慣れてもゾッとする。

でも可愛いところもある。
帰ろうとする、私を見つけて
「岡田さん、またお好み焼き作って欲しい」と言ってくる。
美味しかったん?
「うん。」
じゃあ、また作るわねと言うと、うれしそうにニコッとしてくれる。

私が作るお味噌汁を、おふくろの味と言ってくれるのは、リョウくんだけだ。

明日は何をしでかすのか、厄介でもあるが、ほんのちょっとだけ楽しみでもある。

介護職・看護助手のお仕事探しは「ケアステーション」で

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第15回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第15回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、夕食準備中のキッチン周りの会話を、少し録音した内容です。


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第15回 「キッチン周りでの、何気ないコミュニケーション」

2階(女性のフロア)
16:30 キッチン内 夕食の準備
録音再生スタート

【やえこさん】岡田さーん、おかず、なに?(チキンです)チキンやてチキン。
岡田さん、好きよ。(ありがとう、美味しいご飯作るね)うん

【じゅんさん】ここにお茶入れてぇ
(はい、どうぞ)ありがとさーん🎵

【エリさん】すみませーん 今日お風呂入られへんの?
(明日入りましょ)えーなんで?

【やえこさん】岡田さん、夜勤だれ?
(山本さんですよ)
山本さん来る?(来られますよ)
どこに?(ここに)何時に?(6時に)

【エミさん】岡田さん、私のスプーン置いてくれた?(置いてますよ。ほら)
私のチキン、皮むいて、切ってや。
(切りましたよ)見せて
(はい、こんな感じでOK?)OKですぅ。

【ゆりさん】あの、お茶いいですか?
(ゆりさん、さっき飲みはったのであと15分待ってくださいね)
はい。

【やえこさん】やえこちゃんもお茶欲しい。(やえこちゃんもお薬の時に飲むからもう少し待ってね)漢方?(そうよ)
岡田さん、明日パン?(そやね、明日パンやね)ヤッター(なんのパンかな?)メロンパンがいい。

【エリさん】ねえ、お風呂入られへんの?なんで?なんでよぉ。(さっき入らないっておっしゃったけど)そんなん言ってない!
(エリさん、今日は遅いから明日、入りましょね)えーなんで?なんで?

【エミさん】岡田さん、今入れたのごぼう?にんじん?なに?
(ごぼうの炊いたんです)美味しい?(美味しいですよ)

【エリさん】私のご飯ある?(ありますよ)岡田さん、私の話も聞いてよ。
(聞いてますよ)えー?

【アキさん】ロキソニン貰ってもいいですか?(はい、ちょっと待ってね。はいどうぞ、お茶も入れますね)ありがとう

【エミさん】岡田さん、美代ちゃん、またトイレ行ったで!あぁトイレットペーパー口に入れたで。
(美代さん、はい、お口開けて)

【やえこさん】うんこ行く。(出たら教えてね)うんこ、うんこ、ハハハ

【エミさん】やえこちゃん、ご飯作ってんのにうんことか言わんといてよ。デリカシーがないんやから、もう。
なぁ、岡田さん。(エミさんも今、言うてはったけど)

【ゆりさん】すみません。お茶いいですか?
(まだ、5分しか経ってないからあと10分待ってくださいね)はい。

16:35再生終了…

ご飯前のみんなとの会話は、家族みたいで、そのひと時が貴重で、楽しい時間です。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第14回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第14回。
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今回は、「岡田のおばちゃん」自身のお話です。


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第14回 「休んでる場合じゃない!!」

私は、7月初旬の早朝、犬の散歩中に転んで、左手首を骨折してしまい、急遽、入院、手術、リハビリとしばらく仕事を休まざるおえなくなった。

主治医にいつ仕事に復帰できるか聞いたら、介護職なら2ヶ月くらいは休んだ方がいいよ、と言われたが、3週間ぶりに施設に行ってみた。

早速、ドアの前に訪看さんといた車椅子のエリさんに手を振った。
「うわー岡田さんやん。」
骨折て痛いなぁ。私、エリさんの足の痛さがわかる人になったでというと、ハグして肩をトントンとして下さった。
優しいなぁ。

玄関ドアを開けると、椅子に座ってスマホを見ていたトミちゃんが私を2度見して「お、岡田さんやん!大丈夫?」とそっと手を見てくれた。
トミちゃん、心配してくれてありがとう、と言うと恥ずかしそうにスマホに目を落とした。
なんて優しい子やろ。

靴を履き替えて、2階の事務所に上がろうとすると、自称ナースのオカネさんが何か独り言を言って、持っていたノートに何か書いていたが、私を見つけると、ニヤッと笑って「おばちゃーん」と寄ってきてくれた。
「手、大丈夫?」
知ってたん?骨折しちゃって、ほんまアホやろ?
「無理したらあかんよ」
と言いながら何かノートに書き込み始めた。
看護師(?)としての仕事頑張ってるやん。

事務所では、管理者とサビ管も笑顔で迎えてくれた。
抜糸が終わったのでそろそろ働きたいんですがと言うと、明後日からということになった。早っ!

他のみんなに報告すべく立ち寄ると、エミさん、アキさんがビックリしたような笑顔で迎えてくれた。

「岡田さんやん、骨折したん?」
「大丈夫なん?え!明後日から?」
「掃除出来んの?味噌汁作れんの?」

それくらいできますよ。

「洗濯手伝ってくれるん?」

それは、自分でして下さいよ。

「えー!してよぉ。」

エミさんは相変わらずやね。
やえこちゃん、元気やった?

「岡田さん、おはよう、あくしゅ、夜勤だれ?」

夜勤、誰やろなぁ。握手は右手でしよな。

現在、骨折から、もうすぐ2ヶ月になるが他のスタッフにフォローして頂いて仕事も変わらず楽しくさせていただいている。

介護福祉士になるべく、期間でいうとあと1年半、270日。
再来年の2月の試験に向けて来年からは、試験勉強もしないといけない。
文章問題に60代の読解力がついていかないけど、とにかく休んでる場合じゃない。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第13回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第13回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、1人でいるのが寂しいエリさんのお話です。


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第13回 「エリさんの素顔」

ある朝、仕事場の駐車場に車を停めると私の名前を叫ぶ声が聞こえた。
「岡田さーん!」
ドアを開けて辺りを見渡したが誰もいない。ベランダにも人影はなかったが、続けて
「岡田さーん!」と聞こえた。

私も遂に幻聴が聞こえるようになったかと思ったが、後から到着したスタッフにも聞こえたらしく、なんで彼女、岡田さんが来たのわかったんやろと言った。

声の主は、エリさん。
今年6月に入居されたばかりの利用者さんだ。

急いで2階に上がると、夜勤のスタッフが記録を書きながら
「岡田さん、エリさんがお呼びですよ」と笑った。

なんやろ?外まで聞こえとったけど。
ほんまに人気もんは、困るわ。と独り言をいいながら、各お部屋を回って挨拶をしていく。

やえこちゃん、おはよう。夜勤?誰やろな。おかず?何やろな?

ジュンさん、おはようございます。足の調子いかが?

エミさん、今日もお手柔らかによろしくお願いします。

オカネさん、今日の服めっちゃ決まってるよ!ナイス!!

奈緒さん、あれ?どこにいるの?また事務所かな?

百合さん、アキさん、おはようございます。

鈴さん、おはよう。作業所の準備万端?

エリさん、おはようございます。私を呼ぶ声が外まで聞こえてましたよ。何か御用ですか?

エリさんは、泣き出しそうな顔で
「私、部屋でご飯食べていいの?」とおっしゃった。

エリさんは、いつも何度も大声でスタッフを呼ばれる。
「私のご飯ある?」
「ここにいていい?」
「私、どうしたらいいの?」
「ご飯いつ?」
「ここで食べていいの?」

特に夕方4時位からは、頻繁だ。
「すみませーん」「すみませーん」
ただ、お部屋に行くと、毎回
「私、ここにいていいの?」とおっしゃる。

いいですよと言うと
「なんで?」と怪訝な顔をされ、
リビングに行きますか?と言うと
「えー??なんで?」と今度は怒って言われる。

そしてこの繰り返しが数分続く。

多分、寂しいんだろうと思うが、他の利用者さんの介助もあるので、いつも適当に切り上げてしまっていた。
彼女は、某有名大学卒で、学生時代から1人で海外を飛び回り、英語はペラペラだそうだ。
ワーホリにも行ったことがあるそうで、私に似た経験をした人だということを知った。

何があって統合失調症になってしまわれたのか、原因は分からないが、私とエリさんの共通点が海外旅行好き、ということがわかった。

「す・み・ま・せーーん!」

What’s the matter with you?
(どうしましたか?)

“Can I have lunch here?”
(ここでご飯食べていいの?)

Sure why not?
(もちろんよ)

英語で話してみると、とてもにこやかで病気の前の本当のエリさんに戻られているような気がした。
また明日来ますねとハグをすると泣きそうな笑顔で

“See you tomorrow “
と言ってくださった。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第12回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第12回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は『天使』と言われている、タカシさんのお話です。


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第12回 「天使の声

タカシさんは今年入居された50代の利用者さんだ。

可愛らしい顔立ちで、輪ゴムの手遊びが好きで、オシャレで、妹さんのことが大好きで、古本を買うのが趣味で、背が高くて、ちょこっとぽっちゃりしておられる。

そんなタカシさんは、スタッフの間で『天使』と言われている。

お話はできないが、こちらの言うことは、わかっておられる。

ある日、妹さんからお聞きしたところ「たまに、声、出しますよ」とのこと。
本当?どんな声?笑ってくれるのかな?聞きたい!

ただ、話しかけても、いつも無言。
こそばしたら、笑ってくれる?と思ったが嫌そうなのでやめた。

ある日、テレビを見ていたタカシさんが、急に立ち上がり、まあまあ大きな声で「ドン!!」とおっしゃった。

な、何事?と思ってテレビをみたら『よ~いどん』が始まっていた。

ねぇタカシさん、よ~い…ドン!ってもう1回言って~。と何度もお願いしたが今のところ2回目はない。

他のスタッフに聞いても、聞いたことないというから、あの時の『ドン!』は、かなりレアな声だったんかな・・・。

今日も輪ゴムで手遊びをしておられるタカシさん。
私は、テレビをつけて『その時』を待っている。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第11回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第11回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、恥ずかしがり屋モトヤマさんのお話です。


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第11回 「モトヤマさんと雑談したい!

モトヤマさんは、ひょろっとした痩せ型の40代の男性で、1年中、黒かグレーの上下のスウェットを着ておられる。
お部屋にはベッドと小さい食卓と、小さい衣装ケースしかない。

モトヤマさんは、無表情だが、とても丁寧に小さめの声で話される。
ただ時々、幻聴が聞こえた時は、自分の部屋で布団を被って、大きな声を出される。

「お茶下さい」
キッチンに女性スタッフがいる時は、そっと部屋から出てこられ、内緒話をされるような声で仰る。

私は、モトヤマさんと、お茶以外の他のことも話したくて、お部屋の掃除の時や廊下で会った時など、何かと話題を見つけて話しかける。

ある日、散歩に行かれた利用者さんが、道端で見つけたお花をキッチンのカウンターに飾っておられた。

そこへ、たまたま通り過ぎようとしたモトヤマさんに、このお花きれいですねと言ってみたら、優しいお顔で「そうですね」と答えて下さった。

お髭が伸びてきた時は、まるでキリスト様みたいですよと言ってみたら「いやいや…」と手を少しお顔の前で振って謙遜された。

お茶を出す時も、天気の話をしたり、レクリエーションの話をすると、表情も声も柔らかになられる。

今後の目標は、モトヤマさんと楽しくお話をする事だ。興味のある事が何か、今度ご家族に聞いてみようと思う。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第10回

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今回は、謙虚な百合さんのお話です。


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第10回 「謙虚でおとなしい百合さんのこと」

百合さんは控えめな利用者さんで、ご自分から何かをお話されることは殆どなく、いつも黙ってダイニングで、テレビを見ておられる。

唯一、お茶が欲しい時だけ、「お茶、いいですか?」と聞いてこられる。

百合さん、お風呂の用意が出来たので、お風呂入ってくださいと言うと必ず
「お風呂?いいですわ。今日は、いいですわ」
と言われるので、そんな遠慮されなくても準備も出来ましたし、お洋服用意しましょかという会話を3回くらい繰り返すと、やっと「そうですか」と準備をされる。

ある日、他の利用者さんたちから、ふりかけやバナナを買って来て欲しいと言われたので、百合さんにも何か要る物があれば買って来ますよとお尋ねしたところ、やはり「何もないです。要らないのでいいですわ」と言われた。

そんなある日、女性の階だけで、塗り絵をすることになった。

大人の塗り絵を数枚コピーして、色鉛筆を真ん中に置いてエミさん、アキさん、ジュンさんが取り掛かり始めたので、百合さんにも塗ってみて下さいねと言ったところ案の定「いいですわ。私、しません」と言われた。

まぁそう言わんと一回やってみて下さいと、何度もお願いしたところ「下手やから私、塗り絵、好きじゃないし」と言いながら塗り始められた。

十数分後、終わった作品を見てみんなびっくり!

10個あったお花の一つ一つが、みんな違うセンスのいい色の組み合わせで、線から全くはみ出さず塗れていた。

百合さんすごい!素敵です!

百合さんは、照れたように「そうですか、私、下手やから。まぐれやわ」としきりに謙遜されていたが、今まで見たこともない笑顔で満足そうにしておられた。

百合さんの知らなかった才能を引き出せた事と、変わり映えのない毎日の中で、ひと時でも満足感を感じてもらえたことが、良かったと思った。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第9回

こんにちは!ケアステ編集部です。

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楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、照れ屋なトミちゃんのお話です。


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第9回 「人に触られると、半日パニックになるトミちゃんのお話」

トミちゃんは、昨年入居された19歳の男の子。
思わず撫でたくなるクリクリ頭で、体型がぽっちゃりなので、ついつい触りたくなってしまうのだが、ちょっとでも触れてしまったら、たちまちパニックになって、部屋にこもって、大きな声で暴言を吐き、窓を開けて大切にしているぬいぐるみを外に投げ始めてしまう。

ぬいぐるみは、自分で拾いに行くのだがその時、ハッと我に返るのか
「ぬいぐるみ投げちゃった」とバツの悪そうな顔をする。

ある時、ダイニングで記録を書いていたら、前にちょこんと座り、なんか描いてと言ってきたので、ちゃちゃっと子ブタを描いたら
「それボク?めっちゃ似てる。僕の部屋のドアに貼っておいて」とお願いされた。

これ、トミちゃんと違うよ。子ブタちゃん。
もっとキレイに描いてあげよかと言ったが、それがいいとの事でセロテープで貼ってあげた。

トミちゃんは、すごく喜んでくれて
「僕がココを退所するまで貼っておいてね」と言って、訪問看護の看護師さんやお医者さんにも
「コレ、岡田さんに描いてもらってん」と言ってくれているらしい。

それ以来、何でも話してくれるようになったが、依然、握手もすることができなかった。

ある時、トミちゃんが、
「僕は触られたくないけど、触りたい派やねん」と公言するようになった。

なんや!なんやと!?

触りたい派?

その後、恐る恐る手を出すとハイタッチしてくれたと喜ぶスタッフが続出した。

遅まきながら私にも帰りしなにハイタッチしてくれた。

(*´∀`)人(´∇`)

ありがとうトミちゃん💕
涙が出るほど喜ぶ私を見て、トミちゃんは恥ずかしそうに
「ま、また明日ね」
と見送ってくれた。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第8回

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今回は、お母さんの訪問を心待ちにしている奈緒さんのお話です。


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第8回 「奈緒さんの涙」

昼食の用意をしていると、すごく大きな音が聞こえてきた。

ドンドン ドンドン
バーン ガシャーン

駆けつけてみると部屋から投げ出された、テレビと机と色鉛筆が廊下に散乱していた。

奈緒さん!ダメですよ!
もうやめてください!
誰かに当たったらどうするの?!

奈緒さんは、ベッドにあぐらをかいて、ずっと暴言を言い続けていた。

音を聞きつけた管理者が、奈緒さんの部屋の前にいる私に
「ちょっと」
と手招きをし、事務所に呼び出した。

「岡田さん、今、何て奈緒さんに言いました?」
なんの事か分からず黙っていると
「ダメですよ」って聞こえたんですけど。

はい、そう言いました。

「ダメです」って言ったらダメです。
え?では、やめてください!は?
「それも命令になるのでダメです。」

命令?って…では、この場合、何て言うのがいいのか聞いたところ
「どうされましたか?」
と聞いてくださいとのこと。

命令形で話すと、虐待に繋がる可能性があり、新しく入ってきたスタッフもマネをしてしまうかもしれないので、古参(?)の私には特に言葉遣いには、気をつけて欲しいと注意された。

頑なな私は、言われたことにあまり納得出来なかったが、床に放り出されたテレビと机を片付けながら、まだ暴言を吐き続ける奈緒さんを見て

奈緒さん、どうされましたか?と聞いてみた。

すると、すっと静かになられ、涙を溜めて
「お母さん明日来る?」
と聞いてこられた。

明日来られるって聞いてますよ。
お電話してみますか?

奈緒さんは、お母さんが、明日来ないかもしれないと思って不安になって暴れてしまったと仰った。

怒ったり、躾けたりするのは、私の仕事ではないこと。

利用者さんの話を聞いてあげることが、私の大切な仕事だと奈緒さんに教えて貰った日だった。

介護福祉士への挑戦「岡田のおばちゃん 介護職ブログ」第7回

こんにちは!ケアステ編集部です。

精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第7回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。

今回は、お茶とタバコとロックをこよなく愛するエダさんのお話です。


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第7回 「ライター お茶」

おはようございます!エダさん。

 

エダさんは、9時前になると事務所の前で座っておられる。

 

始業前のスタッフの朝礼が終わったら、スクッと立ち上がって「タバコ」と言って片手を出される。

 

本数を確認すると、キッチンにいるスタッフに「ライター」と親指で点ける真似をされる。

 

そして庭に出て一服してからライターを返しにキッチンに来られ、すかさず「お茶」と言われる。

 

エダさんは、お茶の要求が多く、気がつくと14ℓ以上も飲んでおられる時もあり、体に良くないため、だいたい1時間に200mlとお願いしている。

 

日勤で1階の担当になると、エダさんのお茶の要求に対してのコミュニケーション能力が必要となる。

対応を間違えると、喧嘩になり、エダさんは、コップを投げるわ「こんなとこ、出て行ってやる!」と大声出されるわ、てんやわんやになる。

 

この前もそんなことがあり、状況を良くしようとエダさんの健康のことを思って言っているんだから、あと30分我慢してもらえませんかと言ったが、怒って部屋に入ってしまわれた。

 

その後、30分が経ったので、恐る恐る、お茶どうぞと部屋を訪ねると、笑顔で「あ〜と(ありがとう)」と受け取られた。

 

もう怒ってないようだし良かったなと思い、みんなエダさんのこと好きなんですよと言うと「オレは、嫌いやけどな」と、真顔で言われた。

 

うわーフラれた!と言って振り返ると

ニタニタした、いつもの穏やかなエダさんに戻っていた。