こんにちは!ケアステ編集部です。
精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第13回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。
今回は、1人でいるのが寂しいエリさんのお話です。
精神障がい者グループホームは
毎日がワクワクのアトラクション
楽しくて嬉しくて幸せすぎ。
第13回 「エリさんの素顔」
ある朝、仕事場の駐車場に車を停めると私の名前を叫ぶ声が聞こえた。
「岡田さーん!」
ドアを開けて辺りを見渡したが誰もいない。ベランダにも人影はなかったが、続けて
「岡田さーん!」と聞こえた。
私も遂に幻聴が聞こえるようになったかと思ったが、後から到着したスタッフにも聞こえたらしく、なんで彼女、岡田さんが来たのわかったんやろと言った。
声の主は、エリさん。
今年6月に入居されたばかりの利用者さんだ。
急いで2階に上がると、夜勤のスタッフが記録を書きながら
「岡田さん、エリさんがお呼びですよ」と笑った。
なんやろ?外まで聞こえとったけど。
ほんまに人気もんは、困るわ。と独り言をいいながら、各お部屋を回って挨拶をしていく。
やえこちゃん、おはよう。夜勤?誰やろな。おかず?何やろな?
ジュンさん、おはようございます。足の調子いかが?
エミさん、今日もお手柔らかによろしくお願いします。
オカネさん、今日の服めっちゃ決まってるよ!ナイス!!
奈緒さん、あれ?どこにいるの?また事務所かな?
百合さん、アキさん、おはようございます。
鈴さん、おはよう。作業所の準備万端?
エリさん、おはようございます。私を呼ぶ声が外まで聞こえてましたよ。何か御用ですか?
エリさんは、泣き出しそうな顔で
「私、部屋でご飯食べていいの?」とおっしゃった。
エリさんは、いつも何度も大声でスタッフを呼ばれる。
「私のご飯ある?」
「ここにいていい?」
「私、どうしたらいいの?」
「ご飯いつ?」
「ここで食べていいの?」
特に夕方4時位からは、頻繁だ。
「すみませーん」「すみませーん」
ただ、お部屋に行くと、毎回
「私、ここにいていいの?」とおっしゃる。
いいですよと言うと
「なんで?」と怪訝な顔をされ、
リビングに行きますか?と言うと
「えー??なんで?」と今度は怒って言われる。
そしてこの繰り返しが数分続く。
多分、寂しいんだろうと思うが、他の利用者さんの介助もあるので、いつも適当に切り上げてしまっていた。
彼女は、某有名大学卒で、学生時代から1人で海外を飛び回り、英語はペラペラだそうだ。
ワーホリにも行ったことがあるそうで、私に似た経験をした人だということを知った。
何があって統合失調症になってしまわれたのか、原因は分からないが、私とエリさんの共通点が海外旅行好き、ということがわかった。
「す・み・ま・せーーん!」
What’s the matter with you?
(どうしましたか?)
“Can I have lunch here?”
(ここでご飯食べていいの?)
Sure why not?
(もちろんよ)
英語で話してみると、とてもにこやかで病気の前の本当のエリさんに戻られているような気がした。
また明日来ますねとハグをすると泣きそうな笑顔で
“See you tomorrow “
と言ってくださった。