こんにちは!ケアステ編集部です。
精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第8回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。
今回は、お母さんの訪問を心待ちにしている奈緒さんのお話です。
精神障がい者グループホームは、毎日がワクワクのアトラクション
楽しくて嬉しくて幸せすぎ。
第8回 「奈緒さんの涙」
昼食の用意をしていると、すごく大きな音が聞こえてきた。
ドンドン ドンドン
バーン ガシャーン
駆けつけてみると部屋から投げ出された、テレビと机と色鉛筆が廊下に散乱していた。
奈緒さん!ダメですよ!
もうやめてください!
誰かに当たったらどうするの?!
奈緒さんは、ベッドにあぐらをかいて、ずっと暴言を言い続けていた。
音を聞きつけた管理者が、奈緒さんの部屋の前にいる私に
「ちょっと」
と手招きをし、事務所に呼び出した。
「岡田さん、今、何て奈緒さんに言いました?」
なんの事か分からず黙っていると
「ダメですよ」って聞こえたんですけど。
はい、そう言いました。
「ダメです」って言ったらダメです。
え?では、やめてください!は?
「それも命令になるのでダメです。」
命令?って…では、この場合、何て言うのがいいのか聞いたところ
「どうされましたか?」
と聞いてくださいとのこと。
命令形で話すと、虐待に繋がる可能性があり、新しく入ってきたスタッフもマネをしてしまうかもしれないので、古参(?)の私には特に言葉遣いには、気をつけて欲しいと注意された。
頑なな私は、言われたことにあまり納得出来なかったが、床に放り出されたテレビと机を片付けながら、まだ暴言を吐き続ける奈緒さんを見て
奈緒さん、どうされましたか?と聞いてみた。
すると、すっと静かになられ、涙を溜めて
「お母さん明日来る?」
と聞いてこられた。
明日来られるって聞いてますよ。
お電話してみますか?
奈緒さんは、お母さんが、明日来ないかもしれないと思って不安になって暴れてしまったと仰った。
怒ったり、躾けたりするのは、私の仕事ではないこと。
利用者さんの話を聞いてあげることが、私の大切な仕事だと奈緒さんに教えて貰った日だった。