こんにちは!ケアステ編集部です。
精神障がい者グループホームで実務経験を積みながら、「介護福祉士」取得を目指す『岡田のおばちゃん』による連載ブログの第16回。
楽しいことが大好きで、入居者さんへの愛情たっぷりの彼女ならではの視点と言葉で、グループホームでの日常の出来事や介護のお仕事の実体験をお伝えしていきます。
今回は、憎めないリョウくんのお話です。
精神障がい者グループホームは
毎日がワクワクのアトラクション
楽しくて嬉しくて幸せすぎ。
第16回 「ちょいちょい何かやらかすリョウくん」
リョウくんは、お目がパッチリで、まつ毛も長く、背が高くて、若い女性の利用者さんから人気があり、抱きつかれたり、プレゼントをもらったり、話題になったりするが、女性には全く興味がない28才男子。
そんなリョウくんは、いつも、半分現実の世界にいるが、半分は自分の想像の世界にいる。
自分の世界には、江戸川コナンやワンピースの海賊、シャーロックホームズや明智小五郎がおり、その世界では、よく殺人や誘拐事件が起こっていて、事件を解決すべくスタッフに謎解きをお願いしたり、コナン君に伝言を頼んできたりする。
「岡田さん、奈良シカオ君が誘拐されたからコナン君に伝えてきて」
コナン君は、今どこにいるの?
「わからない。」
そうか、じゃあ会ったら伝えるね。
と、話を聞いて答えてあげると喜んでくれるし、結果を求められないので助かる。ただ、全く意味不明な内容を、際限なく呪文のように話してくることがあって、聞いてるふりをするのに大変な時もある。何かわかる単語があればそれを繰り返して、聞いてるよというと、安心してくれる。
彼は、嫌なことがあると、眉間にシワを寄せるのが不穏のサインだ。
ソルさんがヘンテコな歌を大声で歌い出したり、水分やお菓子の要求が却下されたり、スタッフが他の利用者さんと楽しく話していたり、好きでないスタッフから何か言われたりしたとき不穏になる。
ひどくなると、幻聴が聞こえるのか壁に向かって「コラ!お前!出て来い!」と大声で叫ぶこともある。壁を叩いたり、蹴ったりすることもある。窓からポケモンカードを撒いたり、お風呂のお湯を抜いたり、衣装ケースから服を全部出し床に散らかしたり、いろんな事をやらかす。
家族が買ってくれる高いゲーム機は4台目も壊してしまった。
この前は、ティッシュ9箱から全て床にばら撒いて、ちょっと早い雪景色アートを披露してくれた時は、不覚にも「キレイやなぁ」と言ってしまった。
ある日は、たまたまカギが開いていた事務所から炭酸のペットボトルを5本取ってきて一気に飲みほし、すべて吐いて、床もベッドもエライ事になった。
そんなこんなで、他の人がやらないだろう、色々『面白い事』をやらかしてくれる。
ブツブツ文句言いながら後片付けをしてる私の横でニコニコしながら見守ってくれる。
機嫌が良いと、近づいて、肩を組んできて耳元にフーと息をかけて「ふふふ」と笑う。
これは、慣れないとコワイし、慣れてもゾッとする。
でも可愛いところもある。
帰ろうとする、私を見つけて
「岡田さん、またお好み焼き作って欲しい」と言ってくる。
美味しかったん?
「うん。」
じゃあ、また作るわねと言うと、うれしそうにニコッとしてくれる。
私が作るお味噌汁を、おふくろの味と言ってくれるのは、リョウくんだけだ。
明日は何をしでかすのか、厄介でもあるが、ほんのちょっとだけ楽しみでもある。